この記事では「抵当権を抹消しないとどうなるのか?」を、実例・費用・リスクを交えてわかりやすく解説します。
住宅ローンを完済したのに、抵当権をそのまま放置している方は意外と多いものです。
「そのままでも困らない?」「いつまでに手続きすべき?」と疑問を持つ方に向けて、放置した場合に起こるトラブルや、今すぐ対応した方がいい理由をまとめました。
将来の売却・相続・融資で後悔しないためにも、この記事で要点をサクッと押さえておきましょう。
この記事を読むとわかること
- 抵当権を抹消しない場合のリスクが分かる
- 抹消手続きの具体的な方法と費用が分かる
- 未抹消による実際のトラブル事例が分かる
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【執筆・監修】 |
「ミユキプロテック」の記事は、代表の 西村(宅地建物取引士・空き家相談士・情報漏洩管理士) が執筆・監修。不動産業界で培った33年超の経験をもとに、売却が難しい不動産のリアルな解決策を発信。現場で培った知識と実例を、読者目線でわかりやすく解説。会社ホームページはこちら
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抵当権を抹消しない場合の主なリスクとは?
住宅ローンを完済したあとも、抵当権を抹消しないまま放置している人は意外と多いです。
「完済しているのに、なぜ抹消手続きが必要なの?」と思う方もいますが、実は抵当権が残ったままだと将来的に大きなトラブルを招く可能性があります。
売却・相続・新たな融資など、あらゆる場面で支障が出るため、放置はおすすめできません。
ここでは抵当権を抹消しないと実際にどんな不利益が起きるのかを、代表的な2つのリスクから解説します。
不動産売買におけるトラブル
抵当権が残っている物件は、売却しようとしてもスムーズに進まないことが多いです。
買主から「抵当権が付いている物件はリスクが高い」と判断されることがあり、売却が敬遠されてしまうケースもあります。
また、売買契約の場では抵当権抹消が“契約成立の必須条件”となるため、追加手続きが発生します。
それにより売却スケジュールが遅れたり、買主からの信頼を損ねたりする可能性もあります。
さらに、放置期間が長いほど「書類紛失」「金融機関の合併・消滅」などの問題が起こり、手続きが余計に複雑化します。
結果として、「売りたいときに売れない」という状況に陥る人も少なくありません。
売却を見据えている人は、早めの抵当権抹消が安心です。
新たな融資の妨げ
抵当権が残っていると、不動産を新しい担保として使えないため、融資審査に通りにくくなります。
金融機関は「抵当権が付いたままの物件」に新たな担保権を設定しないことが一般的だからです。
そのため、事業資金や新居購入のためのローン審査で落ちてしまう可能性があります。
また、完済証明書の再取得・抵当権者(金融機関)への連絡など、後からまとめて手続きするほど負担が重くなるという問題もあります。
特に、金融機関が「合併」「統廃合」「業務終了」しているケースでは、抹消手続きに時間と費用がかかることも。
融資を受けたいタイミングで手続きが間に合わず、資金調達のチャンスを逃すリスクすらあります。
資産として不動産を活用したい方ほど、抵当権抹消は早めに済ませておくべき手続きです。
抵当権未抹消による金銭的影響

抵当権を抹消しないまま放置すると、「売れない・融資が通らない」といった手続き面の支障だけでなく、実は金銭的なデメリットも発生します。
「完済しているのにお金がかかるの?」と感じる方もいますが、放置期間が長くなるほど費用やリスクは確実に増えていきます。
ここでは抵当権を抹消しない場合に直面する『追加費用・ペナルティ的出費』についてわかりやすく整理しますね。
抹消手続きの費用
抵当権抹消には、登録免許税や司法書士報酬などの費用がかかります。
ただし、「抹消を先延ばしにすることで費用が増える」わけではなく、必要なのはあくまで最低限の法定コストです。
主な費用は以下の通りです。
- 登録免許税:不動産1件につき1,000円
- 司法書士報酬の相場:15,000円前後(依頼する場合)
- 登記簿謄本取得費用:1通600円
※抹消自体は「自分で行う=司法書士費用なし」でも可能ですが、書類不備や手戻りがあると余計に時間がかかる場合があります。
利息やペナルティの発生
ローン完済後の抵当権は、法律上「自動で消えるものではありません」。
そのため、抹消手続きを放置すると後から余計な出費が発生する“間接的な金銭リスク”につながります。
- 書類紛失による再発行費用:抹消書類(解除証書など)は再取得に時間とコストがかかるケースがあります。
- 金融機関の合併・廃業による手続き遅延:問い合わせ先が変わり、時間と費用が余計にかかることも。
- 売却時に「抹消費用を買主側に請求される・値引きを要求される」ケースもあります。
特に「今は売る予定がないから」という放置は危険で、いざ売却・相続の段階で余計なコストが増える人が非常に多いです。
ローン完済後に早めに抹消しておけば、こうした“後からのムダな支出”は防げますよ。
抵当権を抹消しなかったことで起きた実際のトラブル事例

「今は使わないから…」「完済しているから放置でいいよね」と思って抵当権を抹消せずに放置してしまうと、後になって大きなトラブルになることがあります。
特に売却や相続など“手続きを伴うタイミング”になってから発覚し、想定外の時間や費用を失うケースは少なくありません。
ここでは実際に発生したトラブル事例をもとに、抵当権放置のリスクを具体的にイメージできるように解説していきます。
トラブルが起きたケーススタディ
ある売主が、住宅ローン完済後も抵当権抹消をせずに放置していたケースです。
そのまま物件を売却しようとしたところ、購入希望者の金融機関が「抵当権付き物件は融資できない」と判断し、ローン審査が却下されました。
結果的に契約は破談となり、売主は「書類再発行・司法書士依頼・日程調整」など、急ぎで抹消手続きを進めることに。
さらに、買主側から「手続き遅延による迷惑料相当の値引き」を要求されるトラブルに発展したという事例もあります。
このように、抵当権の放置は
- ✅ 売却時の信用低下・契約破談
- ✅ 急な手続きによりコスト増大
- ✅ 取引相手とのトラブル・値引き要求
といった連鎖的なリスクを招く可能性があります。
事例から学ぶリスク回避の方法
トラブルを未然に防ぐためには、事前準備が何よりも大切です。
まずは登記簿謄本を確認し、「抵当権が残っていないか」を必ずチェックしましょう。
もし抵当権が残っている場合は、金融機関から必要書類を取り寄せ、司法書士に依頼するのが最もスムーズです。
また、過去にトラブルに発展した例を知っておくことで、
- ✅ 「売却直前に慌てて抹消する」状態を防げる
- ✅ 資産価値の低下・契約破談リスクを減らせる
- ✅ 手続きコストを最小限に抑えられる
「後でやればいい」が最も危険です。
抵当権抹消は、完済後できるだけ早めに済ませておくのが最も安全な選択ですよ。
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抵当権抹消の手続き方法とタイミング

抵当権抹消は「書類を出せば終わり」という単純なものではなく、決められた手順・必要書類・期限意識が欠かせません。
特に、住宅ローンを完済したあとに手続きを放置してしまうと、「書類紛失」「金融機関統廃合」「売却時に慌てる」など想定外のトラブルが起きやすくなります。
ここでは抵当権抹消の具体的な流れと、最も安全・確実なタイミングについてわかりやすく整理しますね。
手続きに必要な書類と流れ
抵当権抹消登記に必要な書類は決まっており、ほとんどは金融機関から受け取る書類です。
手続きに必要な主な書類は下記の4点です。
- 解除証書(抵当権抹消に必要な正式書類)
- 委任状(金融機関が登記申請を委任するための書類)
- 登記申請書(法務局へ提出)
- 登録免許税(1件につき1,000円分の収入印紙)
書類が揃ったら、法務局に申請して抵当権の抹消登記を行います。
司法書士に依頼すれば、書類作成・申請・登記確認まで代行してくれるためスムーズですよ。
抹消が完了したら、登記簿(全部事項証明書)を取得し、本当に抵当権が消えているか必ず確認しましょう。
書類の準備を後回しにすると、再発行・問い合わせ・金融機関調整の手間が増えやすいため、完済後すぐに準備するのがベストです。
最適な抹消のタイミング
抵当権抹消を行うタイミングは、住宅ローンを完済した直後が最も理想的です。
その理由は、金融機関から受け取る書類に“有効期限”がある場合があるためです。
また、完済後すぐに抹消しておけば、以下のリスクを避けられます。
- ✅ 書類紛失・再発行手続きの手間
- ✅ 金融機関の統廃合で連絡先が変わるトラブル
- ✅ 売却・相続のタイミングで慌てて対応するストレス
特に不動産売却や新たな融資を考えている場合、抵当権が残っていると契約が進みません。
タイミングを逃すと、抹消手続きが複雑化し、余計なコストや日数を失うケースが実際にあります。
「まだ売らないし、すぐ使わないから放置でいい」は後で後悔するパターンです。
計画的に動くなら、▶ 不動産を売るベストなタイミングも一緒に確認しておきましょう
抵当権を抹消しない選択肢はあるのか?

「売る予定もないし、そのままでも困らないかも…」と、抵当権を抹消しない選択肢を検討する方もいます。
結論から言うと、日常利用の範囲では“当面の不都合が少ない”場合もありますが、将来の取引や相続で高確率で支障が生じます。
このセクションでは、例外的に抹消を急がなくてもよいケースと、抹消しないことで発生し得るデメリットを整理します。
例外的に抹消が不要なケース
いつでも売却するわけではなく、当面は自宅として住み続けるだけというケースでは、今すぐの抹消が必須とは限りません。
例えば、ローン完済後も物件を売却せず、自分で使用し続けるだけであれば、短期的には目に見える不利益が出ないこともあります。
ただし、抵当権は完済しても自動消滅しない権利で、登記簿に残り続けます。
また、相続・贈与・担保設定・建て替えの融資など、将来の節目ではほぼ確実に抹消が必要になります。
「昔は相続で免除」という取扱いは一般論として成立しません。
相続時に抵当権が残っていれば、相続登記や売却の前提として抹消手続きが求められることを前提に準備しておきましょう。
抹消しない場合のメリットとデメリット
抹消手続きを見送るメリットとしては、今すぐに動かなくてよい「手間の回避」と、司法書士報酬などの「目先の費用節約」が挙げられます。
しかし、中長期的には不動産取引・融資・相続の場面で“手続きが進まない/遅れる”という実害が大きくなりがちです。
さらに、登記簿に抵当権が残ったままだと物件の印象が悪化し、値引き要請や買い手の敬遠につながることもあります。
- メリット(短期):司法書士報酬の節約、今すぐの事務負担を回避。
- デメリット(中長期):売却・担保設定・相続手続きの遅延、書類再発行の手間、金融機関統廃合で問い合わせ先が分かりにくくなる、市場での信頼性低下。
総合すると、「当面使うだけ」のメリットより、「将来の確実な手戻りリスク」の方が大きいのが実情です。
後悔しないためには、完済直後など動きやすい時期に抹消しておくのが安全です。
売却や資金計画を見据えるなら、「不動産 売るタイミングは今?知らないと損する5つの判断軸」も合わせて確認しておきましょう。
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抵当権抹消しないとどうなる?よくある質問(FAQ)
抵当権の抹消手続きを怠ると、不動産の売却や新たな融資に支障をきたす可能性があります。
ここでは、抵当権未抹消のリスクや影響、手続き方法に関するFAQをご紹介します。
Q1.抵当権抹消は必ず自分で行う必要がありますか?
A. いいえ、自分で行う必要はありません。司法書士に依頼することで、手続きを代行してもらえますよ。専門家に任せることで、手続きの手間やミスを減らせます。自分で手続きをする場合は、法務局への書類提出が必要です。どちらを選ぶかは、手間とコストのバランスを考慮して決めると良いですね。手続きが不安な場合は、司法書士への依頼を検討してください。
Q2.抵当権抹消の手続きにかかる費用はどのくらいですか?
A. 登録免許税として、不動産1件につき1,000円が必要です。また、司法書士に依頼する場合は、報酬として数万円程度の費用がかかりますよ。この費用は地域やケースによって異なるため、事前に見積もりを取ることをおすすめします。費用を抑えたい場合は、自分で手続きを行う選択肢もあります。ただし、時間や手間を考慮して選択することが重要ですね。
Q.3抵当権を抹消しないと、売却時にどのような影響がありますか?
A. 抵当権が残っていると、売却時に購入希望者が不安を感じることがあります。その結果、契約が成立しないケースもありますよ。また、売却の条件として抵当権抹消が求められるため、手続きが遅れると契約も遅延します。最悪の場合、買主が契約をキャンセルするリスクも考えられますね。売却をスムーズに進めるためには、事前に抵当権を抹消しておくことが重要です。
Q4.抹消手続きをしないまま放置すると時効になりますか?
A. 抵当権には時効が存在しますが、通常10年とされています。ただし、抵当権者が時効を中断する手続きを取ることがあるため、あまり頼りにはなりません。また、時効を待つ間に不動産取引や融資がスムーズに進まないリスクもありますよ。安全かつ確実にリスクを避けるためには、早めの抹消手続きをおすすめします。専門家に相談して、適切な対応を取りましょう。
Q5.抹消手続きは司法書士に依頼するのが良いのでしょうか?
A. 司法書士に依頼することで、手続きの煩雑さを大幅に軽減できます。特に、書類の不備や法務局での手続きに不安がある場合は、専門家に任せると安心ですよ。依頼料は発生しますが、手間やリスクを減らせるメリットがあります。初めての手続きで不安がある方は、司法書士への依頼を検討してください。効率的に手続きを進めたい方にとって、有効な選択肢となります。
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抵当権抹消のリスクを理解して適切に対応しよう
抵当権を抹消しないことで生じるリスクやデメリットについて詳しく解説してきました。
将来的なトラブルを防ぐためにも、早めの対応が重要です。
この記事を参考に、スムーズな不動産取引を進めてくださいね。
もし不安がある場合は、司法書士や専門家に相談することをおすすめします。
適切な対応で、安心と信頼を手に入れましょう。
もし、売却を本気で検討しているなら、早めの相談で選択肢が広がります。
まずは“今の状況”を共有しましょう。
※査定・相談は無料。対応可否や期間・条件は物件・地域・手続により異なります。



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