売れない家だからといって、先に解体する必要はありません。
確かに、更地にすることで買主を探しやすくなる物件はあります。
しかし、建物を壊したからといって土地そのものの需要が高くなるわけではなく、解体費をかけても売却条件がほとんど変わらない場合もあります。
そこで先に確認したいのが、解体によって売却条件が本当に良くなるかという点です。
解体費だけを見るのではなく、税負担、買主需要、売却期間まで並べて比べてみます。
最終的には売却価格ではなく、手元に残る金額で判断します。
売れない家は解体すれば売れるとは限らない

古い建物が残っていると、更地にしたほうが売れそうに見えることがあります。
しかし、建物を壊しただけで土地の需要まで増えるとは限りません。
解体するかどうかを考えるときは、「壊す・壊さない」の二択だけでなく、いつ解体するのかまで含めて売り方を比べる必要があります。
解体するかどうかを決める前に、古い家・築古住宅の売却方法を比較すると、現況売却や買取も含めて選択肢を整理できます。
古家付き・更地渡し・先行解体の3案で比べる
解体の判断は、古家付きのまま売るか、更地にして売るかという二択ではありません。
古家付きのまま買主を探す方法もあれば、契約後に売主が建物を解体して更地で引き渡す方法もあります。
さらに、買主を探す前に解体し、最初から更地として販売する方法もあります。
それぞれ売主が解体費を負担する時期が違うため、一つの方法だけを見て決める必要はありません。
解体するかだけでなく、いつ解体するかも比較します。
判断基準は売却価格ではなく最終手取り
更地にしたことで売却価格が上がったとしても、その分だけ利益が増えるとは限りません。
売却価格からは解体費や関連費用を差し引く必要がありますし、売却まで長引けば、その間の維持費もかかります。
そのため、古家付きで売った場合と更地にした場合を比べるときは、単純な売却価格の差だけでは判断できません。
価格差ではなく、費用を引いた後の手取り差を確認します。
解体する前に5つの条件を確認する

建物が古いという理由だけで、解体を決めるのは早すぎます。
建物と土地の状態によって、解体した後の利用方法や売り方が変わるからです。
費用をかけてから「壊さないほうがよかった」とならないためにも、まず次の5つの条件を確認しておきます。
再建築できる土地か確認する
最初に見ておきたいのが、建替えできる土地なのかという点です。
都市計画区域・準都市計画区域では、建築物の敷地には原則として接道に関する基準があります。
そのため、接道条件を満たしていない土地では建築できない場合がありますが、一方で認定や許可による例外もあります。
ここは、古い建物だからといって先に壊してしまわないほうがよいところです。
再建築の可否が不明なまま、先に建物を壊さないことが重要です。
建物を使いたい買主がいないか確認する
築古住宅であっても、建物をそのまま利用したい買主がいる場合があります。
また、購入後にリフォームやリノベーションをすることを前提に、古い住宅を探している人もいます。
建物を残しておくことで、検討できる買主が増える場合もあるため、解体を決める前に、現在の建物が中古住宅として販売できる可能性があるかを査定時に確認します。
更地を探す買主の需要を確認する
土地としての需要が強い地域であれば、更地にすることが有効な場合があります。
新築目的の買主にとって、購入後に自分で建物を解体することが負担になる場合があるためです。
ただし、もともと土地を探している人が少ない地域であれば、建物を壊しただけで売却条件が良くなるとは限りません。
解体する前に、更地にした場合にどのような買主を想定できるのかを見ておく必要があります。
更地にすれば誰が買うのかを確認してから解体します。
解体費に何が含まれるか確認する
解体費は、建物本体を壊す工事費だけではありません。
外構や残置物の撤去が必要になることもありますし、石綿や地中埋設物が見つかれば追加費用が発生する可能性もあります。
そのため、見積もりを見るときは総額だけを見るのではなく、どこまでが工事範囲に含まれているのか、どのような場合に追加費用が発生するのかまで確認します。
売却時期と固定資産税への影響を確認する
住宅用地には、固定資産税の課税標準の特例があります。
建物を取り壊すことでその適用関係が変わる場合があり、解体する時期によって翌年度の土地の税負担が変わることもあります。
そのため、「いつ解体するか」は工事の都合だけで決めるものではありません。
解体日だけでなく、翌年1月1日の状態も確認します。
解体費は建物本体の工事費だけで判断しない

解体費を比べるとき、単純な坪単価だけでは判断できません。
同じ大きさの家であっても、建物の構造や道路条件、隣家との距離などによって工事内容が変わるためです。
売却のために解体を検討するのであれば、建物本体の工事費だけではなく、実際に必要になる工事全体の金額を把握しておきます。
構造・道路・隣家との距離で費用は変わる
木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造では、解体の方法や工事内容が違います。
また、重機が入りにくい敷地では作業方法が変わる場合がありますし、隣家との距離が近ければ養生などの対応も必要になります。
同じ建物面積だから同じ解体費になるとは限りません。
建物面積だけでなく、現場条件を見た見積もりを確認します。
アスベストの事前調査も必要になる
建築物を解体するときは、石綿の事前調査が必要です。
調査結果によっては、除去などの追加対応が必要になる場合があります。
また、解体部分の床面積の合計が80㎡以上の場合は、事前調査結果の報告も必要です。
解体費を比べるときは、見積もりの中で石綿調査がどのように扱われているのかも確認します。
残置物・外構・地中埋設物も確認する
家の中に荷物が残っていれば、処分費がかかる場合があります。
また、塀や物置、庭木などをどこまで撤去するのかによっても費用は変わります。
さらに、建物を解体した後に古い基礎や井戸などが見つかる場合もあるため、見積もりに何が含まれているのかは事前に確認しておく必要があります。
見積書では「何を撤去する金額か」を確認しておきます。
古家付き・更地渡し・先行解体を比較する
解体費をかけるべきか迷ったときは、古家付きのまま売る方法、更地渡し、先行解体の3つを並べて比べると判断しやすくなります。
それぞれ解体費を負担する時期が違い、売却に伴うリスクも同じではありません。
物件の状態だけでなく、売主側の事情も含めて選びます。
| 売り方 | 解体する時期 | 主な特徴 |
| 古家付き現況売却 | 売主は解体しない | 解体費を先に負担せず販売できる |
| 更地渡し | 契約後から引渡しまで | 買主決定後に売主が解体する |
| 先行解体 | 売出し前 | 最初から更地として販売できる |
古家付きのまま現況で売る
古家付きのまま売る方法なら、買主が決まる前に売主が解体費を用意する必要がありません。
また、建物をそのまま利用したい買主がいる場合には、その可能性も残すことができます。
一方、建替えを考えている買主から見れば、購入後に解体費が必要になるため、その費用を見込んで価格を考える場合があります。
古家付き土地の詳細は、古家付き土地を現況で売却するときの注意点で確認できます。
まず市場の反応を見たい場合に残せる選択肢です。
買主が決まってから更地渡しにする
古家付きの状態で販売し、買主が決まった後に売主が建物を解体して、更地で引き渡す方法もあります。
この方法なら、買主が決まる前に解体費を支払う必要がなく、一方で買主には更地で引き渡すという条件を提示できます。
ただし、売買契約では解体する範囲や引渡期限を明確にしておく必要があります。
先行解体と現況売却の中間となる方法です。
売出し前に解体して更地で売る
土地需要が強い地域では、売出し前に解体して更地にする方法が有効な場合があります。
買主が自分で建物解体を手配する必要がなくなり、土地の形状も現地で確認しやすくなります。
その一方で、まだ買主が決まっていない段階で売主が解体費を負担しなければなりません。
そのため、更地にしたことで売却価格がいくら上がるのかだけではなく、かけた費用を回収できるのかまで見ておく必要があります。
解体後の価格上昇だけでなく、費用回収まで確認します。
解体するかは売却後の手取りで判断する

解体するかどうかを判断するとき、最も比較しやすい数字は最終的な手取りです。
更地にした場合の査定額だけを見ても、本当に解体したほうが有利なのかは分かりません。
古家付きのまま売る場合と、解体して更地にした場合を、できるだけ同じ条件で比べます。
まず古家付きの想定手取りを出す
最初に、現在の状態で売った場合の査定額を確認します。
そのうえで、売却に必要な費用や、売れるまでの維持費も含めて考えます。
また、買主が建替えを前提にしている場合、解体費を価格にどのように見込むのかも不動産会社へ聞いておくと比較しやすくなります。
費用をかけていない状態を比較の基準にします。
次に更地にした場合の想定手取りを出す
次に、更地として売った場合の想定価格を見ます。
ただし、その金額をそのまま古家付きの査定額と比べるのではなく、解体費や関連工事にかかる費用を差し引きます。
さらに、工事を始めてから追加費用が発生する可能性もあるため、その点も見込んで比較します。
| 比較 | 考え方 |
| 古家付き | 想定売却額-売却費用-保有中の負担 |
| 解体後 | 想定売却額-解体関連費-売却費用-保有中の負担 |
売却期間と維持費も加えて比較する
売却価格が高くても、買主が決まるまで長期間かかれば、その間も固定資産税や管理費などの負担は続きます。
遠方にある家なら、管理や現地確認にかかる負担も無視できません。
金額だけを比べるのではなく、売却までどの程度の時間がかかるのかまで含めて考えます。
価格・費用・時間を合わせて手取りを判断します。
固定資産税だけを理由に古家を残さない
「家を解体すると固定資産税が上がる」という話を聞いたことがある方もいると思います。
これは、住宅用地に適用される固定資産税の特例が関係している場合があります。
ただし、税金が上がる可能性だけを理由に、危険な状態の建物まで残す判断が適切とは限りません。
税負担だけではなく、建物の状態や売却予定も合わせて考える必要があります。
住宅用地特例は1月1日の状態が基準になる
住宅用地には、固定資産税の課税標準の特例があります。
原則として、毎年1月1日の土地利用状況が基準になるため、住宅を取り壊す時期によっては翌年度の扱いが変わる場合があります。
解体する日だけを見て決めるのではなく、売却予定と税負担を合わせて見ておきます。
解体時期と売却予定を合わせて確認する必要があります。
管理状態によっては建物があっても特例対象外になる
建物を残していれば、必ず住宅用地特例が続くというわけではありません。
管理不全空家や特定空家について行政から勧告を受けた場合には、住宅用地特例を受けられないことがあります。
そのため、「税金が上がるから」という理由だけで、管理できない空き家を残しておけばよいという話ではありません。
税金だけを目的に、管理できない空き家を残す判断は避けます。
解体時期は売却予定と税負担を合わせて考える
固定資産税は自治体が課税する地方税で、建替え中など個別の事情によって扱いが関係する場合もあります。
具体的な税額や特例がどうなるのかは、物件所在地の自治体へ確認します。
解体予定日だけを見て、翌年度の税額まで断定しないことが安全です。
解体するか迷ったときの判断手順
売れない家を解体するか迷ったときは、順番を決めて考えると判断しやすくなります。
最初から解体業者だけへ相談して工事費を調べるのではなく、まず現在の建物と土地でどのような売却が考えられるのかを見ます。
その結果、解体に意味がありそうなら、具体的な費用を調べていく順番です。
最初に土地と建物の状態を確認する
まず、現在の建物が利用できる状態なのかを確認します。
そのうえで、接道や再建築の可否を見て、土地としてどの程度の需要があるのかも不動産会社へ確認します。
ここで重要なのは、建物を壊すこと自体を目的にしないことです。
解体した後、その土地をどのように売るのかまで見えている必要があります。
先に「壊した後に売れる土地か」を確認します。
3案の査定条件をそろえて比較する
古家付き、先行解体、更地渡しの3案を比べるときは、できるだけ同じ前提で査定してもらいます。
想定価格だけでなく、それぞれどの程度の売却期間を見込んでいるのかも聞いておきます。
条件をそろえて比べることで、解体することによって何が変わるのかが見えやすくなります。
解体が有利な場合に見積もりを取る
更地にすることで売却条件が良くなると判断できたら、具体的な解体費を調べます。
見積もりを比較するときは、各社の撤去範囲や追加費用が発生する条件をそろえて見る必要があります。
金額だけが違っていても、工事内容そのものが違えば単純には比較できません。
解体見積もりは、売却判断の材料として使います。
契約条件まで含めて最終判断する
更地渡しを選ぶのであれば、どこまでを売主側で解体するのかを売買契約で明確にします。
また、工事中に地中埋設物などが出た場合の扱いや、工期が延びた場合の引渡条件も確認しておきます。
金額だけではなく、その条件で実際に引渡しまで進められるのかを見たうえで最終的に決めます。
売れない家の解体に関するよくある質問
建物の解体は、一度行えば元の状態には戻せません。
そのため、古いから、売れないからという理由だけで決めるのではなく、売却方法や土地条件を確認してから判断する必要があります。
ここでは、解体を検討するときによくある疑問について、判断の基準を整理します。
Q:古い家は解体した方が高く売れますか?
A:更地にすることで売却価格が上がる物件はあります。
ただし、解体費を差し引いた後の手取りまで増えるとは限らないため、現況と更地の両方を比べて判断します。
Q:解体すれば家は早く売れますか?
土地需要が強い場合は、更地にすることで買主が検討しやすくなることがあります。
一方で、土地需要そのものが弱ければ、建物を解体しただけでは状況が改善しない場合があります。
Q:再建築不可でも解体してよいですか?
A:再建築の可否が分からない状態であれば、解体する前に確認が必要です。
道路条件などについては、自治体の建築担当部署へ確認します。
Q:解体すると固定資産税は必ず6倍になりますか?
A:固定資産税額が単純に6倍になるとは限りません。
住宅用地特例や土地の評価額などによって実際の税額は変わるため、個別に確認する必要があります。
Q:買主が決まってから解体することはできますか?
A:売買契約後に売主が建物を解体し、更地にしてから引き渡す方法があります。
その場合は、解体する範囲や工事期限などを売買契約の条件として明確にしておきます。
Q:解体業者へ先に見積もりを頼むべきですか?
A:解体費の概算を把握するために、先に見積もりを取ることはできます。
ただし、売却条件や更地にした場合の需要を先に確認しておけば、その解体費をかける意味があるのかまで含めて判断しやすくなります。
まとめ|売れない家は「壊す前の比較」が重要
売れない家だからといって、解体が最初の対策になるとは限りません。
古家付きのまま売る方法、更地渡し、先行解体を同じ条件で比べ、再建築できる土地なのか、税負担はどう変わるのか、解体費はいくらかかるのか、更地を探している買主がいるのかまで確認します。
解体によって手取りが増えると判断できてから進めます。
家が売れない原因を広く確認する場合は、売れない家の特徴と対策をまとめた親記事で確認できます。
先に査定と条件を比較すれば、不要な解体費を避けられます。
